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Tom Waits
Orphans: Brawlers, Bawlers & Bastards limited edition vinyl set

 2009年にリリースされたトム・ウェイツの7枚組アナログ盤LP『Orphans: Brawlers, Bawlers & Bastards』は、2006年に発表された3枚組CDの3つのタイトル「BRAWLERS」、「BAWLERS 」、「BASTARDS」に、プラス「BONUS 」として未発表の6曲が収録されている。
 Side A、「Crazy ‘Bout My Baby」はファッツ・ウォーラー(Fats Waller)の曲のカヴァー。スウィンギーなピアノが心地よく、楽しい演奏になっている。「Diamond In Your Mind」は、ソロモン・バーク(Solomon Burke)のアルバム『Don't Give Up on Me』にウェイツ/ブレナンが提供した曲のセルフカヴァーで、リチャード・ギア主催、チベットの僧を救うためのコンサートのライブアルバム『Healing the Divide』でトム・ウェイツがクロノス・クァルテット(Kronos Quartet)との共演で披露した曲でもある。「Cannon Song」は作曲家クルト・ワイル(Kurt Weill)と戯曲家ベルトルト・ブレヒト(Bertolt Brecht)による「三文オペラ」の曲だが、ヴォイス・パーカッションをベースにしたアヴァンギャルドなアレンジが新鮮である。
 Side B、「Pray」はウェイツ/ブレナン名義の曲で、繰返されるフレーズと呪術的な打楽器のリズムが印象的。トム・ウェイツ個人名義となっている「No One Can Forgive Me」もまた、打楽器の音と拡声器を使用したと思われる力強いヴォーカルの歪感が特徴的な曲。最後の「Mathie Grove」はトラディショナル・ソングで、トム・ウェイツの声のみによって歌われるが、背後に多彩な楽器の気配をも感じさせる深みのある一曲だ。
 ノスタルジーと前衛的な要素が影響し合いながら混在する『オーファンズ:ブローラーズ、ボーラーズ&バスターズ』は、予測不可能なトム・ウェイツの思考の流れそのものをパッケージにした作品集だと改めて感じた。

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